【2023年民法改正コラム3】長期間経過後の遺産分割のルール(令和5年4月1日施行)
- 2023.01.15
改正理由
これまで、遺産分割には期限がなかったため、長期間放置しても法律上のペナルティはありませんでした。そのため、相続人が早期に遺産分割をするインセンティブが働きにくく、遺産分割が長期間なされなかった結果、生前贈与や寄与分に関する証拠がなくなってしまったり、関係者の記憶も薄れてしまったりして、適正な遺産分割を行う上で支障となるおそれがあるとされていました。
改正内容
そこで、民法改正によりタイムリミットが新設されることとなり、
「相続開始時(被相続人の死亡時)から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分による」こととなりました(新民法904条の3)。
つまり、被相続人が死亡してから10年が経過すると、原則として、特別受益や寄与分の主張ができなくなり、法定相続分に応じた遺産分割しかできないこととなります。
ただし、例外的に、次の場合は具体的相続分による遺産分割が可能です。
① 10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき。
② 10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由(※)が相続人にあった場合に、当該事由が消滅したときから6か月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求したとき。
※被相続人が遭難して死亡していたが、その事実が確認できなかった場合など。
③ 相続人全員で、具体的相続分による遺産分割に合意したとき。
経過措置
この改正は、改正法の施行日(令和5年4月1日)以前に被相続人が死亡していた場合にも適用されますので、注意してください。
ただし、施行日から5年間は、適用が猶予されます。
そのため、相続開始時から10年を経過していても、施行日から5年を経過していなければ、具体的相続分による遺産分割(特別受益や寄与分の主張)が可能です。