【2023年民法改正コラム1】土地・建物に特化した財産管理制度の創設(令和5年4月1日施行)
- 2022.12.17
背景
所有者が不明の土地・建物や、管理が不適当な土地・建物は、荒廃や老朽化等によって周辺環境の悪化を招くなどの問題がありました。従来、こうした場合は、事案に応じて、訴訟を提起して判決を得て強制執行をする方法や、不在者財産管理人や相続財産管理人を裁判所に選任してもらい、選任された管理人に対応してもらう方法がありましたが、いずれも非効率になりがちでした。
そこで、こうした土地・建物の効率的な管理を目的として、所有者が不明だったり管理が適切になされていない土地・建物を対象として、個々の土地・建物の管理に特化した財産管理制度が新たに設けられることとなりました。
所有者不明土地・建物の管理制度
調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、利害関係人が裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理人を選任してもらうことができるようになります(新民法264条の2~8)。
管理人は、保存行為(建物の修繕、不法占拠者への明渡請求等)や、その土地・建物の性質を変えない範囲の利用又は改良を行うことができるほか、裁判所の許可を得れば、その土地・建物の売却などもできます。
管理不全状態にある土地・建物の管理制度
所有者による管理が不適当であることによって、権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合に、利害関係人が裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理人を選任してもらうことができるようになります。
管理人は保存行為ができますので、ひび割れや破損が生じている擁壁の修理、ごみの撤去、害虫の駆除などを行うことができます(新民法264条の9~14)。