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遺産分割において、連絡を無視する相続人がいる場合の対応方法

2026.01.21

身内の方が亡くなり、遺産分割を進めようと考えても、連絡を無視する相続人がいて話し合いを進められないケースは少なくありません。

遺産分割に期限はありませんが、そのまま放置すると、さまざまなリスクが生じることに注意が必要です。

今回は、連絡を無視する相続人がいる場合に、遺産分割を実現するための対応方法をご紹介します。

連絡を無視する相続人がいると遺産分割協議をしても無効

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、一部の相続人と連絡がとれないまま、他の相続人だけで遺産分割協議を行っても無効です。

遺産分割協議書に、連絡を無視する相続人の署名・捺印を勝手に行うと、私文書偽造などの罪に問われるおそれもあることに注意しなければなりません。

相続人が連絡を無視する理由として考えられること

相続人が連絡を無視する理由に応じて、とるべき対応方法が変わってくることもあります。そのため、まずは理由を探りましょう。

具体的な理由はケースバイケースですが、よくある理由として以下のようなものが挙げられます。

・親族間の不仲により感情的な対立がある

・提示された遺産分割案に納得していない

・面倒なことに巻き込まれたくないと考えている

・被相続人の借金を相続したくないと考えている

・無視することで自分に有利になると考えている

・どうすればよいのか分からず判断を先延ばしにしている

・仕事やプライベートが多忙で対応する余裕がない

・高齢や認知症などで手紙の内容を理解できていない

・特殊詐欺などと勘違いしている

・入院中や転居などで、手紙を受け取っていない

・行方不明となっている

他にもさまざまな理由が考えられますが、最低限、相手が手紙を受け取ったのに無視しているのか、そもそも手紙を受け取っていないのかは確認する必要があります。その確認方法は、後ほどご説明します。

相続人と連絡がとれないまま放置するリスク

一部の相続人と連絡がとれないまま長期間放置すると、以下のリスクが生じることに注意しましょう。

預貯金の払い戻しが難しい

金融機関が被相続人の死亡を把握すると、その人名義の口座はすべて凍結されます。その後は、遺言書がない限り、相続人全員で手続きをしなければ口座の名義変更や預貯金の払い戻しはできません。

そのため、預貯金を遺産として受け取ることができないだけでなく、葬儀費用や被相続人の医療費、介護費用などの支払いに充てることもできなくなります。

不動産の売却や取壊しができない

遺産の中に不動産がある場合、遺言書がなければ、その不動産の売却や取壊しを行うためには相続人全員の同意が必要です。

一部の相続人と連絡がとれないままとなれば、遺産となった不動産の有効活用が難しくなるだけでなく、老朽化した空き家を放置することによるさまざまなトラブルを招くおそれもあります。

寄与分や特別受益の主張ができなくなる

寄与分や特別受益の主張は、原則として相続開始のときから10年が経過する前に行わなければならないこととされています。

この期限が過ぎてしまうと、被相続人の財産の形成・維持に特別の貢献をした相続人や、逆に被相続人から多額の生前贈与を受け取っていた相続人がいたとしても、適正に遺産を分けることが難しくなるおそれがあります。

相続税が高くなる

相続税が発生する場合でも、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用することにより、節税できるケースがあります。

しかし、そのためには、原則として相続開始を知ったときから10ヶ月以内に、遺産分割協議を成立させた上で相続税の申告をする必要があります。したがって、一部の相続人と連絡がとれないままでは、高額の相続税を課せられることにもなりかねません。

なお、相続税の申告期限までに遺産分割ができていなかった場合でも、申告期限から3年以内に分割できた場合は特例の適用を受けることができますが、その場合は所定の手続きを取る必要があります。

遺産の使い込みによるトラブルにつながる

遺産分割が未了のままでも、生活や事業資金のために遺産を使う必要性が生じてくることもあるでしょう。しかし、他の相続人に無断で遺産を消費してしまうと、トラブルにつながるおそれがあります。

後日、無視していた相続人と連絡がとれた場合には、その時点で遺産分割協議を行うことになります。しかし、その相続人の法定相続分を侵害していた場合などは特に、不当利得返還請求訴訟や損害賠償請求訴訟などの裁判に発展するおそれもあることに注意が必要です。

二次相続が発生することがある

二次相続とは、最初の相続で遺産を引き継いだ相続人が亡くなることで発生する相続のことです。年老いた両親が数年のうちに相次いで亡くなるようなケースが典型例です。

最初の相続で遺産分割が未了のまま二次相続が発生すると、相続人の数が増えることにより、権利関係が複雑化することになりがちです。また、不動産の相続登記などの手続きも複雑化してしまいます。

無視する相続人と連絡をとる方法

無視する相続人と連絡をとる方法として、以下のことが考えられます。

遺産分割を放置するリスクを伝える

まずは、遺産分割を放置することで発生するリスクを手紙などで伝えてみましょう。

感情的な対立のある相続人であっても、丁寧に、かつ、粘り強く連絡を試みることで、遺産分割協議をスタートできる可能性は十分にあります。

内容証明郵便を送付する

連絡を無視する相続人へ手紙を送付する際には、内容証明郵便を利用することが有効な場合もあります。

格式の高い方式で手紙を送付することで、相手方に心理的なプレッシャーをかけることができます。内容証明郵便を受け取った相手方が「無視し続けると裁判沙汰になってしまう」などと考え、連絡してくることも期待できます。

相手方が手紙を受け取ったかどうか不明な場合も、配達証明付きの内容証明郵便を送付することで、その手紙を受け取ったかどうかを確認できます。

自宅を訪問する

手紙やメール、電話などの間接的な手段で連絡がとれないのであれば、相手方に直接、会いに行くことも考えてみましょう。対面すれば、話し合いが成立する可能性が高まるでしょう。

ただし、感情的に対立している相手方の自宅などに無理やり押しかけると、さらに関係が悪化するおそれもあるため、慎重な対応が必要です。

弁護士を通じて通知する

弁護士に遺産分割を依頼し、弁護士から通知書を送付してもらうことも有効です。弁護士からの通知書を受け取った相手方が、裁判沙汰になることを恐れたりして連絡してくるケースは多いです。

親族と不仲で関わりたくないと考えている相続人でも、弁護士には連絡してくるケースがよくあります。

相続人が連絡を無視し続けるときの対処法

相続人が連絡を無視し続ける場合には、以下の方法で遺産分割することを検討しましょう。

法定相続分どおりに遺産を分割する

遺言書がなくても、法定相続分どおりに遺産を分割する場合には、遺産分割協議は不要です。

ただし、この方法によると不動産は相続人全員の共有名義とするしかなく、有効活用が難しいことに変わりはありません。また、預貯金の解約については、銀行は相続人全員からの申込みでなければ応じないことが一般的ですので、遺産分割協議をしなければ法定相続分を引き出すことはできません。

そして、連絡がつかない相続人の法定相続分に相当する遺産を、誰かが管理しなければならないというデメリットもあります。

遺産分割調停を申し立てる

一部の相続人と連絡がつかないままでも、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることは可能です。

連絡を無視し続けていた相続人であっても、裁判所から呼出状が特別送達で届くと、ことの重大性を認識して調停期日に出頭することが多いです。

相続人全員が出頭すれば、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを進めることにより、遺産分割を実現できる可能性があります。

遺産分割審判で解決する

調停でも話し合いがまとまらなかった場合や、一部の相続人が家庭裁判所からの呼び出しにも応じない場合、手続きは審判へ移行します。

審判では、各相続人が提出した主張や証拠を踏まえて、家庭裁判所が遺産分割の内容を決めます。

各相続人が審判書を受け取った日の翌日から2週間以内に即時抗告がなければ、審判が確定しますので、一部の相続人と連絡がとれないままでも強制的に遺産を分割することが可能です。

行方不明の相続人がいるときの対処法

連絡のつかない相続人が行方不明となっている場合は、まず、所在を調査する必要があります。戸籍の附票を取り寄せると現住所を確認できますので、そこへ手紙を送付するなどして連絡を試みてみましょう。

所在が判明しない場合や、どうしても連絡がつかない場合には、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てることが有効です。不在者財産管理人が選任されたら、その人を交えて遺産分割協議を行い、遺産を分けることができます。

また、民法改正によって令和5年4月1日から、不動産の共有者(相続人も含まれますが、相続開始時から10年を経過していることが必要です)の所在を知ることができない場合に、裁判所での裁判によって、一定の金銭を供託することにより当該行方不明者の共有持分を取得することができるようになりました。

行方不明の相続人の生死不明が7年以上(戦争や大規模な災害など特別の危難に遭遇した場合は1年以上)続いている場合は、失踪宣告を申し立てることもできます。失踪宣告が認められると、その人は死亡したものとみなされますので、それを前提として遺産分割を進めることが可能となります。

その他、状況別の対処法

相手方が被相続人の借金を相続したくないと考えていることが分かったら、相続放棄ができることを教えてあげるとよいでしょう。相続放棄をした人は、その相続に関して初めから相続人にならなかったものとみなされますので、他の相続人だけで遺産分割協議を行うことができるようになります。

相手方が認知症などで判断能力が低下している場合には、成年後見人の選任申立てを検討しましょう。成年後見人が選任されたら、その人を交えて遺産分割協議を進めることが可能となります。

その他にも、状況に応じて有効な対処法が考えられますので、困ったときは経験豊富な弁護士に相談してみるとよいでしょう。

遺言書があれば連絡を無視する相続人がいても遺産分割が可能

被相続人が残した遺言書で遺産分割の方法が指定されている場合には、遺産分割協議は不要です。連絡を無視する相続人がいても、遺言書で指定されたとおりに遺産を分けることができます。

将来のトラブルを防止するためには、早めに遺言書を作成しておくのがおすすめです。

遺産分割に関する悩みは弁護士に相談を

連絡を無視する相続人がいて困ったときは、まず弁護士へご相談ください。状況に応じて具体的なアドバイスを受けることができます。

遺産分割を弁護士に依頼した場合には、速やかに連絡を試みてもらえますし、連絡がとれた場合には、遺産分割協議も代行してもらえます。

必要に応じて遺産分割調停や遺産分割審判などの複雑な手続きについても、全面的にサポートしてもらえますので、満足できる結果が期待できるでしょう。

放置によるリスクを回避するためにも、早めのご相談をおすすめします。

この記事を担当した弁護士
堺鳳法律事務所 代表弁護士 笹倉拓人
保有資格弁護士、税理士、宅建士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、M&Aシニアエキスパート
専門分野相続|不動産|離婚
経歴神戸大学経営学部 卒業|大阪市立大学法科大学院 修了|2012年:弁護士登録(65期)|大手法律事務所勤務を経て2018年10月に堺鳳法律事務所設立
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