遺留分は放棄できる?
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の遺産の取得割合です。これがあるため、たとえば被相続人が経営する会社の後継者(たとえば長男)に遺産を集中させたいと考えても、遺留分侵害額の請求をされ、うまくいかない場合があります。
もっとも、遺留分は放棄することができます。そのため、被相続人が後継者以外の他の相続人に遺留分を放棄してもらうことによって、後継者への遺産の集中を実現することが可能になります。
これは相続開始前にも開始後にもすることができますが、相続開始前に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
自社株式を集中的に相続させたい場合
なお、遺留分の事前放棄は、各相続人が自ら家庭裁判所に申し立てをしなければならず負担が大きいこと、家庭裁判所によって許可・不許可の判断がバラバラになる可能性があることから、利用しにくいこともあるとされています。
そのため、自社株式を、特定の相続人に集中させたい場合は、経営承継円滑化法の「遺留分に関する民法の特例」を利用することも検討しましょう。
これを利用すると、後継者を含めた現経営者の推定相続人全員で合意の上で、現経営者から後継者に贈与等された自社株式について、
①遺留分算定の基礎となる財産から、除外(除外合意)
または
②遺留分算定の基礎となる財産に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意)
することができます(両方を組み合わせることも可能です)。
①除外合意は、後継者が現経営者から取得した自社株式について、他の相続人は遺留分の主張ができなくなるため、相続により自社株式が分散するのを防止できます。
②固定合意は、相続発生後に自社株式の時価が上昇しても、後継者が想定外の遺留分の主張を受けることを防止できます。